「あれ?」

相良先輩の横に、見覚えのある人がいる。

他校の制服、黒いセンターパートの髪、日焼けしたような小麦色の肌、くっきりした目鼻立ち。

きょとんとしている俺に、相良先輩が話しかけた。

「なあお前、こいつ知ってる?」
「へ?」

相良先輩の知り合いじゃないのか。学ランを着たその人は、俺に向かってにこりと笑った。

「突然すみません。僕、東高の田邊っていいます。動画で相良くんを見て、会いたくなって」
「ああっ」

田邊という名前で思い出した。

この人も、ひとつ年上で、相良先輩と同じくらい強くて、大会上位の常連だった人だ。

「もしや、福路中の」
「あ、そうです。きみは?」
「西中出身の小池です」
「ははあ、見たことあると思いました。去年の県大会に出られてましたね」

相良先輩とは対極な丁寧さ。年下の俺にも敬語を崩さない。

田邊さんの試合は何度も見たことがある。技巧を凝らすというよりはパワーで押していく系。中一の俺だったらあっという間に跳ね飛ばされて、場外反則負けしていただろう。