「あ、わ、忘れ物? なんですか?」
「小手サポーター。親父のなんだわ。勝手に持ってったのがバレた」

更衣室は貴重品もあるため、部活中はカギがかかっている。

それにしても、お父様のサポーターとは。

剣道が強いひとって、わりと一家でやっていたりするものな。お父様はどんな方なのだろう。

ダンディなお父様に剣道を教わる小さな相良先輩を想像しただけで、頬がゆるんだ。

ちなみに小手サポーターはその名の通り手に嵌めるサポーターで、小手を打たれたときの衝撃を緩めるためのもの。

なきゃないでも困らないけど、あったら便利。小手、打たれると痛いし。

「わかりました。すぐ開けます」
「なに笑ってんだよ。キッショ」

従順にしているのに、キショイと暴言吐かれた。ひどいな。

といってもそこまでショックを受けるでもなく、顧問にカギを借りて戻ると、人が増えていた。