「引退してブラブラしてるやつに負けたなんて思われたら、俺たちの沽券にかかわるじゃないか」

「まあまあ、逆に周りが油断してくれたら試合で有利になるかもしれないよ」

青谷部長がなだめると、前田先輩は「それもそうか」と表情を明るくした。

稽古していればわかるが、三人の先輩の実力はみんな同じようなもので、俺と同等か少し劣るといった感じだ。

決してバカにしているのではなく、青谷部長がそう言っていたのだ。

「でも、惜しかったなあ。小池くんが相良くんに勝ったら、団体戦五人で出られたのに」

青谷部長はそう言って笑った。

あの勝負をする前に、相良先輩との約束の内容はみんなに話してある。

俺が部活を辞めることになったらどうしようとドキドキしていたみたいだが、そこはなんとか回避した。

「すみません」
「いいのいいの。四人になっただけでもありがたいんだから」
「それに、相良くんが入ってくれたとして、仲良くできるか微妙だし」

二年生の先輩二人が顔を見合わせて笑う。