「だけど勝てなかった」

彼の呟きが、ぽつりと床に落ちる。まるで、線香花火の最後のように。

なぜだかぎゅっと胸が痛くなる。

「俺、強くなったでしょう」

跪いたまま見上げると、ペンとおでこを叩かれた。

「バーカ、自惚れんな」

相良先輩は仏頂面で言うと、胴を外してゆっくり立ち上がり、隅のベッドに横になる。

「着替え持ってこい、一年」
「小池です」
「小池、防具も全部回収してこい。更衣室にある私物も全部。急げ」
「は、はいっ」

寝ころんだまま命令するなんて、あなたは王様か。

心の中でツッコミはするけど、反発心は起きない。

俺は絶対君主の忠実な下僕となり、武道場横の更衣室へ急ぐ。

それにしても、引き分けか。俺にしてはよくやったほうだ。