俺のまだ高い声に反応した審判は、「早く準備しないと、不戦敗になるよ」と言って待ってくれている。

見るからに俺が入学したての一年生だから、大目に見てくれているのだろう。

相手も暑い中待っているのだから、早く防具をつけないと。

面タオルを頭に巻き、胴をつけようとするけど焦れば焦るほどうまくいかない。

それもそのはず、中学生用の防具は俺の体には大きく、胴は左右からギュウと押さえて体との間の空間を少なくしなくてはならない。

胴を背中に回し、脇を締め、肘で胴を押さえ、手首で紐を縛る。その一連の動きにもたついていると、後ろから声がした。

「大丈夫。焦らないでいい」

低く優しい声の主を振り返る間もなく、胴が左右から押された。

「押さえてるから、紐を縛って」

誰かが補助してくれている。先輩かと思ったけど、知らない声だった。

声に導かれるままにぎゅっと紐を縛ると、添えられていた手が離れ、背中から腹側に胴を回してくれた。