保健室はギリギリ開いていた。

養護教諭は相良先輩の足首だけささっと確認すると、冷やすものを貸してくれた。

家の人に迎えの連絡を入れてくれるということで、彼女は職員室へ向かった。

残された俺は、相良先輩の前にひざまずく。

「まだ痛いですか」
「いい、もう落ち着いた」

相良先輩は頑なに袴をめくろうとしない。足首はいいとして、膝を傷めていないだろうか。

見上げた彼は、さっきよりは顔色がよくなって……というか、赤くなっている気がする。

「つった感じですか?」
「たぶん。急に動いたからな」

深いため息をつき、彼は天を仰ぐ。

「一年と少し、か」
「そんなにブランクがあるように思えませんでした」

剣道は腕の振りが重要だと思われがちだが、実は足の運び方や速さが最重要。

一番負担がかかるのが足だと言われている。