「相良先輩!」

手早く防具を取って顧問に渡し、俺は彼のあとを追った。途中で床に落ちたてぬぐいを拾って。

「なにあれ、感じ悪い」
「え、そこがかっこいいんじゃん」
「イケメンの道着たまらんわ」

ギャラリーの声を置き去りに、俺は裸足のまま、夢中で彼の背中を追いかけた。



武道場から出て、校舎の裏庭へ行くと、手洗い場の脇にうずくまっている相良先輩を見つけた。

「先輩!」

俺は彼に駆け寄る。

ここまで追ってくるギャラリーはおらず、俺の声だけがやけに響く。

「大丈夫ですか」

相良先輩は右足を押さえてうずくまっていた。

顔をのぞきこむと、額に玉の汗が浮かんでいる。暑さでの汗ではないようだ。