面の隙間から見えるのは、いつものうつろな瞳ではなかった。

ギラギラと輝く、戦士の目だ。

ぞくぞくと快感に似たものが全身を駆け巡る。

「どうして──」

気付けば呟いていた。

ブランクがあるのに、こんなに動ける。速いし強い。

それにあなたの中にはこんなに闘志がみなぎっているのに。

「どうしてやめちゃったんですか」

もっと相良先輩と戦いたい。

剣道をしていてこんなにワクワクするのは、初めてなのに。

「うるせえ!」

先輩が叫んで飛びかかってくる。

竹刀が絡まるような攻防。

一瞬の隙をついて小手を狙ってきた先輩の頭に、夢中で竹刀を振り下ろす。

「それまで!」

どっちの竹刀も、狙ったところを同時にとらえたように感じたそのとき、声がかかった。

時間だ。

結果は引き分け。最後の打突はカウントされなかった。

俺たちは中央に戻り、お互いに礼をする。