窓から声が聞こえてくる。

次第にそんな声も耳に入ってこなくなった。

向かい合い、竹刀を前に構えて蹲踞。

全ての所作が美しい相良先輩に見とれている場合じゃない。

立ち上がったら、試合開始だ。

お互い竹刀を正眼に構える。

様子を探る間もなく、相手が強く踏み込み、打ち込んできた。大きな声と共に。

初心者は「めーん!」と叫ぶところだが、達人になるほどなんと言っているかわからなくなる。

この声が小さいと一本にならないという謎ルールがあるので、みんなオリジナリティ溢れるかけ声を出すのだ。

なんて思っている場合じゃない。俺は先輩の面を竹刀で受けて流す。

そう、この俺をなめてもらっては困る。

中一から二年間、相良先輩の試合をすべて見て、録画をし、研究してきたのだ。

先輩はいつも、最初に面を打つ。