「では、用意でき次第始めよう」

顧問に言われ、俺たちは試合場を挟んだ端と端でそれぞれ面と小手をつける。

先輩の所作はブランクがあるとは信じられないくらいスムーズで迷いを感じられない。

ああ~、いい。白い道着を着こなせる美貌とスタイル。色褪せた面のビジュも最高。

推せる。一生推す。

準備完了した俺たちは、試合場の白線の外側で向き合う。

顧問がそれぞれの竹刀に不備がないか確認し、返却した。

ちなみに竹刀がささくれていると、打ち合ったときにささくれが飛んで相手の目や口に入ったりして危険である。

また、竹刀の中に鉄などを入れて威力を上げるのも反則なので、やけに重くないかもチェックしたのだろう。

「では主審は僕が、副審は青谷くんと前田くん。制限時間は三分間、三本勝負とする」

先輩たちも道着で紅白の旗を持つ。

合図をされ、俺と先輩は礼をして白線の中に入る。

「あれ、始まるの?」
「笛とかないの?」