仕方ない。中学でぐんぐん背が伸びてしまい、サイズが合わなくなってしまったのだ。

剣道は金がかかる。ジャージ袴でも、だいたい五千円前後。中学三年間で買った袴は五枚。それ以上は申し訳なくてねだれなかった。

しかしあまり短い袴は大会のときに規定違反になる恐れがあるので、もうそろそろ用意しないとなあ……上も学校名の刺繍を入れないとだし……と考えていたところである。

「金胴で弱かったら、そのほうがクソださいですけど」

こっちもボソッと言い返すと、ピキッと相良先輩のこめかみの血管が反応するのが見えた。

「まあ、たしかにだな」

ギャラリーがいるからか、おとなしく俺の挑発を流し、彼はてぬぐいを取り出す。

面をかぶる前に頭に巻くそれには、『地方大会出場記念』の文字がプリントされている。出場した選手にだけ配られる手ぬぐいだ。

お~、小物で圧かけてきた。負けず嫌いだな。