「おーい、男子早く準備しなよ」

女子部の先輩が声をかけてくれて、俺たちは自分たちの準備が遅れていることに気づいた。

武道場は暑すぎるので、熱中症にならないよう、出番が近づくまでは防具を外して待つようになっている。

自分の出るリーグの試合順を把握し、出番が近づいたら防具と紅白のたすきを背中に着けてスタンバイ。しかし前の試合が延長戦になったら最悪である。

「え、あ、ちょっと待って先輩」

先輩たちもそれぞれ忙しい。

俺は自分の試合順がよくわからぬまま、放置されてしまった。

普通は補欠が選手の手伝いをするのだけど、うちは部員自体が少なく、補欠は初心者の一年生なので右も左もわからない。俺と同じだ。

とりあえず同じリーグに名前がある人の後ろをついていけばいいか。

心細くちょこちょこ歩いていると、目当ての試合場から大人の声がした。

「西部中学の小池くん。小池くん、いませんか? 始めますよ」

「あ、います! すみません!」

まさかの、試合順一番目だった。