宣戦布告から二週間と少し後。

本来なら部活のない木曜日、誰もいないはずの武道場に人だかりができた。

空け放した窓の外から、無関係の生徒たちが中をのぞいている。

今日は柔道部はいない。

そう、俺と相良先輩の勝負のために、特別に武道場を開けてもらっているのだ。

顧問は団体戦のメンバーが増えるかもしれないということで、この勝負に乗り気。

今日も審判を務めるため、紅白の旗を持ってスタンバイしている。

当然無観客で行われるはずの勝負なのだが、どこから情報が漏れたのか、本校の剣道部史上最多のギャラリーが集まってしまった。

今か今かと主役を待ちわびる観客たち。

主役とはもちろん、俺のことではない。

「小池くん、本当にやるの?」

青谷部長が心配そうに言う。

こくりとうなずいたそのとき、入り口のほうからわあっと歓声が上がった。

俺たちは振り返り、そのまま固まった。

入口から後光を背負って入ってきたのは、相良先輩だった。

中学時代と同じ、白い道着袴に金色の胴。右手に竹刀を、左手に面と小手を持っている。