整った顔に、わかりやすく怒りの色が浮かぶ。

鬼のような迫力に、気圧されそうになる。

「お前、俺に勝てると思ってんの? 県大会二回戦敗退で? 俺、地方大会四位だよ」
そんなの知ってる。俺は二年間、あなたを見ていた。

「そんなの、過去の栄光ですよね?」

「なんだと」

「ただ毎日ダラダラ生きている人に負ける気はしません」

慣れない挑発で顔が引きつらないように細心の注意を払う。

すると先輩がカッと目を見開き、右の手を動かした。

速い。

胸倉をつかまれる直前で、一歩退く。

自分の手が空を掴むとは思わなかったのだろう。先輩は目を見開き、次の瞬間舌打ちをして手を引っ込めた。

「やってやるよ。その代わり、俺が勝っても泣くなよ」

忌々しげに吐き出された言葉を、俺は聞き逃さなかった。

やってやるって。

相良先輩が、もう一度竹刀を握る。

やっと、先輩と戦うことができる。

それだけで、俺は天にも舞い上がりそうな高揚感を覚えた。