「すみません」

母親にも姉にも「かわいくなくなった」とよく言われるので、自覚はある。

小学生の頃も特別かわいかったわけではないけど、図体が大きくなるとさらにかわいくなくなったのだろう。

「こんなにでかくなってたら気づかんだろ」
「ですよね」
「で、どこまで行ったの、最終的に」

剣道の話を先輩からふってくれるなんて。

鼓動が高鳴る。俺は今、奇跡を目の当たりにしている。

「団体戦も個人戦も、県大会二回戦負けです」
「微妙だな」
「はい」

先輩は県大会のさらに上まで行っているので、微妙と言われても仕方ない。

剣道はやればやるほど、強さを自慢できなくなる。

市の大会で一位だって、県に行けば一回戦負けなんてザラ。

さらに県大会入賞しても地方大会でやられて、全国に行けるのなんてほんのひとつかみ。