自分はもう少し、コミュ力のあるほうだと思っていた。

剣道の大会や練習試合で他校との交流をするうち、友人と呼べる人が何人かできた。

女子とも普通に話せるし、教師や先輩たちににらまれたこともない。

なのに、先輩の前に出るとうまく話せなくなる。なんでだ。

俺は隣の彼に倣い、カフェラテをすする。

指先が冷える。せっかく初めてのオシャレカフェラテなのに、味がよくわからない。

ただただ、苦い。

「無糖派?」
「はい? ああ、とくに推している政党はないです」
「無党派じゃねえ。ガムシロ入れねえのかって聞いてんの」
「あっ」

先輩がトントンと指で叩いたところを見ると、自分で持ってきたガムシロがころんと転がっている。

忘れてた。だから苦かったのか。

俺はふたを開け、ガムシロを投入した。