「お前さ、どうしてしつこく俺に関わろうとすんの?」
「へ?」

ぼやっとしていたので、反応が遅れた。

けれど先輩は今までのように舌打ちをするでもなく、俺を見つめている。

「どうして……」

改めて聞かれると、言葉に詰まる。

どうして俺は、こうも相良先輩に惹かれるのだろう。

昔憧れた彼は別人のようになっている。剣道もやめてしまった。

だけど俺は幻滅も絶望もしていない。

ただ、相良先輩のことをもっと知りたい。近くにいたい。

まるで恋みたいなこの気持ちを、うまく言葉にして伝えることができない。

「なんとなく?」

やっと絞り出した答えに、相良先輩は少し落胆したように眉を下げた。

「そっか、なんとなくか」

会話が途切れた。

俺は自分の無能さに打ちのめされる。

先輩がどんな返事を望んでいたのか、さっぱりわからない。