もうすぐで店を通り過ぎるというところで、はっと足が止まった。

視界の片隅に、またもや金色の髪が見えた気がしたのだ。

「あー!」

そこに彼はいた。

窓際の隅っこの席で、片手にコーヒー、片手に文庫本を持っている。

なんという偶然! なんとおしゃれな風景であることか!

先輩は文庫本に視線を落としていて、窓の外の俺に気づいていないようだ。

踵を返した俺は、大股で引き返し、迷いなくカフェの中に足を踏み入れていた。