きっとそう思わせてくれたのは、相良先輩だ。 彼の竹刀さばき、足の運び方、人との関わり方、すべてを目標にしてきた。 まだ全然近づけていない。もっと彼の剣道を見ていたかった。 でも、もうかなわない。 俺は相良先輩のいない世界で竹刀を振るしかないのだ。 好きなことをしているはずなのに、いつしか俺の心の片隅には、寂しさと虚無の間のようなものが住み着いていた。