相良先輩は全日本レベルの選手だったので、剣道をやっていた者なら知っているはず。説明はいらないだろう。
「そりゃうれしいよ。きみと彼がいてくれたら、県大会も夢じゃない」
今までは県大会にも勝ち上がれなかったということだろう。
ムリもない。三人で五人チームに挑むとなると、だれひとり負けられないのだから。
「でもさ、それだけ上手なひとがやめたんだから、それなりの理由があったはずだよ。簡単に解決して戻ってこられるような理由じゃないんだろう」
俺は先輩の言葉にうなずく。
そうだ、その通り。
あんなにキラキラ輝いていた先輩が竹刀を捨ててしまうほどのなにかがあったんだ。
「戻るきっかけがないだけかもしれないけどね。どっちにしろ、期待できないよ」
青谷部長が声をかけ、全員で水分補給をしてから稽古に戻る。
剣道は相変わらず楽しいし、好きだ。
剣道をしていない自分なんて想像できないし、大人になってもゆるゆる続けていけたらと思っている。