俺は慌てて出入口まで駆けて外へ乗り出した。しかし彼の姿はもうどこにもなかった。

「小池くん、どうしたー?」

ぼんやり外を見ていた俺の背中に先輩の声がぶつかる。

「あ、と……ネコがいた気がして」
「え、ネコ? なにネコ?」
「金……色の目の黒ネコ……かな」

下手すぎるごまかしを、先輩たちは疑いなく信じたようだ。

「なんだ、入部希望者じゃなかったか」

三年の青谷部長が苦笑を漏らす。

青谷部長は来月下旬から始まる夏の大会が、最後の大会になる。

欲を言えば団体戦に出る部員がもうひとりほしいはずだ。

できれば経験者で、強いとなおいいんだけど……。

「あのう。もし、相良先輩が入ってくれるって言ったら、先輩たち嬉しいですか?」

突然の質問に、青谷部長は目を丸くした。