「別に怖くないよ?」

彼らは不良だけど、悪事と言えばせいぜい学校をサボったり遅刻したりするくらい。

悪い薬をたしなんだり、強盗をしたりということはしていないみたいなので、最初ほど怖くはない。

俺はあの日から、先輩を見かけるたびに声をかけるようにしていた。

推しに認知されたいというアイドルオタクの気持ちに近いのかもしれない。

一緒に部活はできなくとも、少しでも近付きたいと思い、積極的に話しかけている。

しかし今のところ、二人きりで話す機会には恵まれていない。

いいんだ、憧れの相良先輩の姿を頻繁に見られるだけで。言葉を交わせるだけで。

去年までは、それすらかなわなかったんだから。