クーラーがなく、地獄の窯のような暑さの武道場で、先輩が嘆く。

「もお~、俺無理じゃん。相良(さがら)さんと同じリーグだよ……」

県総体の市内予選。種目は剣道。

中一の俺は、入学したばかりだというのに六月のこの大会に出場していた。

理由は簡単。先輩の人数が少ないから。

小学六年生になってから剣道を始めた俺は、一応経験者として先輩たちに歓迎され、今まで三人で出ていた団体戦の四人目として大会一日目に出場。

結果は三回戦敗退。惜しいところで地区予選への出場権を逃した。

仕方ない。ほかの学校は三年と二年で五名の団体を組んでくる。そこへ中学生になりたての身長百五十センチもない俺が入ってやっと四名になった、できたてほやほやチームにしてはよくやったと思う。

ちなみに俺以外にも一年生が三名入部したが、全員初心者で今回は練習しても間に合わず、出場を見合わせた。ムリにやって怪我でもしたら大変だもの。