「優勝したら、また褒美をやらないとな。スペシャルなやつ」
「わあ、なんだろう。手編みのセーターとか?」
「キッショ。発想がキショイわ」
充希先輩は顔を歪めて数歩離れる。
なんでだろう。いいと思うんだけどな。ま、充希先輩はそういう細かい作業するほうじゃないか。
「もっといいやつ、あんだろ」
「ええ……地区大会以上のものは思いつかないですね」
まさか充希先輩を手に入れられるとは思っていなかったものなあ。
こうして隣にいてくれるのが夢みたいだ。これ以上望んだら罰が当たる。
そんな俺とは対照的に、彼は不満顔。
「俺、自信なくしそう」
「えっ」
「お前、俺のこと押し倒したいとか思わんわけ?」
単刀直入に言われて、ボンっと顔が爆発しそうなくらい熱くなった。
「お、おし、おし」
立ち止まってしまった俺を置いて、充希先輩は先を歩いていく。
後ろから見た耳が赤い。彼も恥ずかしいようだ。