武道場は日に日に暑くなっていく。
県大会を控えた剣道部は、夏休みを返上し、部活に励んでいた。
「えーと……期間限定の予定だったんだけど、引き続きよろしく」
気まずそうに挨拶をする相良先輩を、俺と部長たちは拍手で迎えた。
地区大会のあと、充希先輩──名前で呼ぶように命令されたので、そうすることにした──は休養とリハビリに励み、二週間ぶりに武道館に戻ってきた。
県大会は今から一週間後。
相当厳しい戦いになることが予想されるけど、頑張るしかない。
「うれしいよ相良くん」
「よろしくな」
充希先輩は、最後までもたなかった自分をみんなが迷惑だと思っているのではないかと心配していた。
けれどそれはただの杞憂だったようだ。
迷惑なんて思うはずがない。
充希先輩がいなければ、俺たちは地区大会で終わっていたのだ。心強い存在でしかない。