「あの、四人ってことは」
「そう。きみが入ったら、剣道部は四人になります」
「ってことは、あの、相良さ……先輩は」

さっと先輩たちと顧問の顔が青くなった。

まるで俺が凶悪犯の名前を口に出したかのようなリアクションだ。

「相良くんは剣道をやめたらしいよ」
「え……」
「高校では一度も竹刀を握っていない。気づけば不良になっていた」

深刻な顔で、二年の前田先輩が呟く。ちなみにもう一人は今泉先輩という。

それはともかく、不良って。それも死語じゃなかったのか。

相良さんは高校デビューしただけで、剣道は続けているんじゃないかなんて……俺の淡い期待は見事に打ち砕かれる。

前田先輩も中学で剣道をやっていたらしく、相良さんのことは何度も試合で見かけたらしい。

あれだけ目立つスター選手が、どうしてヤンキー(死語)になってしまったのか。

もったいない。非常にもったいない。

「僕も事情はよく知らないんだけど」

そう言ったきり、先輩たちは黙ってしまった。