「いやあの、それよりも、先輩が剣道を続けてくれるかどうかが重要で、あの、あと、試合に夢中になっていて」
「忘れてたんだろ。もういいわ」

すねたように、頬を膨らませる相良先輩。

なにそれ。それじゃまるで、相良先輩が俺のこと、好きみたいじゃないか。

いやいやありえない。違う。そんなはずはない。

「し、したいです。したいんですけど」
「ですけど、なに」
「だって相良先輩、俺のこといつもキショイって。ウザいしダサイし……。そんな相手とキ、キ、キ、キスしたいわけないじゃないですか」

自分で言っていて、悲しくなってきた。

相良先輩は黙って俺のことを見ている。

「先輩に嫌な思いさせたくないです」
「ふうん」
「好きだから。先輩のこと、大好きだから。だから、嫌われたくない」

大声で言ってしまい、気づいた。

俺……つい、本音を全部ぶつけてしまった。

相良先輩は宝石のような目を大きく見開く。

ああ、驚いたよな。申し訳ない。困らせるつもりなんてなかったんだ。

心臓が壊れそうなほど高鳴る。頬が熱い。

どうしようもなくて俯くと、髪に彼の指が触れる気配がした。