しかし、臭い。うれしいけど、みんな臭い。臭いの四乗。

「へへへへ……」

俺もなんだか泣けてきた。

先輩たちも俺も、みんな頑張った。人生でこんなに頑張ったのは初めてだったかもしれない。

臭くてもいい。この臭いさえ尊い。

「小池」

澄んだ声に、先輩たちが反応する。

体を離した彼らの先に、相良先輩が立っていた。

「よくやった。褒めてつかわす」

そう言い、彼はにっこりと笑った。

俺も、先輩たちも初めて見る、相良先輩の心からの笑顔。

「光栄です」

眩しすぎて、涙が出る。

先輩たちもそれぞれ肩を抱き合って泣いていた。顧問に至っては、嗚咽を漏らしている。

ふと横を見ると、田邊さんたちも泣いていた。

そりゃあ今までノーマークだった高校に負けたんだから、めちゃくちゃ悔しいよな。

だって、彼らは剣道に命をかけて、取り組んでいるんだもの。

視線を戻すと、相良先輩が自分の手ぬぐいを持って俺に近づき、乱暴に涙を拭う。

ツンとした汗の匂いが鼻腔を突いた。

でも彼の香りだと思うと、それすら甘美に感じる。