視界の端で赤い旗が上がっているのが見えた。

まばたきをして副審を見ると、ふたりとも赤い旗を上げている。

赤は……俺だ。

おおおおおと驚く観客の声が二階から響く。

俺はぽかんとあたりを見回した。

勝った──んだよな?

「元の位置に戻って」

主審に言われ、我に返る。

正面を見れば、田邊さんも天を仰ぐように見つめていた。

俺たちはゆっくり元の位置に戻り、そこに他の四人も集合する。

全員で礼をし、その場から離れた。

白線の外側に戻るなり、興奮した青谷部長に抱きつかれる。

「小池くん! 素晴らしいよ! きみは素晴らしい!」
「あ、あわわわ」

そうか、本当に俺は勝ったんだ。

正直もう体力も精神も限界で、青谷部長にいい言葉を返す余力もない。

「なんてやつだ!」
「男だよお前は!」

二年の先輩ふたりも抱きついてくる。

彼らの目に浮かんだ涙を見て、じわじわと喜びが湧き上がってきた。