俺を心配するなんて、あなたらしくない。

いつも自信満々な顔で、偉そうに俺に命令してくれないと。

元の位置に戻り、試合再開。

田邊さんも息が上がってきていた。

さっき、相良先輩と三分間戦ったんだ。ムリもない。

長引けば不利になる。

相手もそう思ったのだろう。

鍔迫り合いを解消した俺たちが大きく踏み込んだのは、ほぼ同時だった。

田邊さんは竹刀を大きく振りかぶる。

相良先輩はここで胴を打った。

だけど俺はそうしない。

手首に意識を集中し、田邊さんの腕が振り下ろされると同時に自分も動いた。

力強い田邊さんの面が骨まで響く。しかしこちらにもしっかりとした手ごたえがあった。

「面あり! それまで!」

重々しい主審の声が響く。

どっちだ?