まるで鳥のように高く飛び、叫んだ彼は面を狙ってくる。

俺は竹刀でそれを受け、摺り上げて弾き、相手の小手を狙った。

竹刀の先は小手をかすめたが、決め手にはならなかった。

一度下がろうとした刹那、相手は胴を狙ってくる。

ひとつひとつの動作が恐ろしく早い。そして重い。

なんとか守っているだけでは勝てない。消耗して隙を見せた瞬間にやられる。

相手のほうが体力は絶対に上。延長戦になる前に、早く一本決めなければ。

「下がるな、小池!」

後ろから相良先輩の声が聞こえた。

気付けば、激しいつばぜり合いで相手に押され、白線の外にかかとが出ようとしている。

二回出されたら、反則となり一本を取られる。

なんとか体を回し、場外を逃れたのはいいものの、態勢を崩してしまう。

そこを容赦なく狙われ、必死で踏ん張って耐えた。

さっきの相良先輩と同じだ。いつもの剣道ができない。させてくれる相手じゃない。

でも、負けるわけにはいかないんだ。

下がるな。一歩も引くな。

俺は負けない!