「せっかく面白くなってきたところなんだ」

ぞくりと背中が震える。

好戦的に笑う相良先輩は、壮絶なほど美しい。

彼の魂が、戦いを求めている。そう感じた。

「壊れてもいい。俺がやる」

立ち上がろうとする相良先輩を、青谷部長たちが必死で止める。顧問もやってきて、相手にしばし待ってもらうように申し出ていた。

「もういいよ、相良くん。もう十分だよ」
「俺たちのために、ありがとう」

二年の先輩たちの声に涙が滲む。

「お前らのためじゃねえ。これは俺の──」

相良先輩の声が止まった。

なぜなら、俺が彼の面紐を強引にほどいたからだ。

「小池!」

俺は相良先輩の面を脇に置き、次は小手を外す。

「お前、俺の言うことが聞けないのかっ」
「すみません、今回は聞けません」

先輩たちが相良先輩を押さえている間に、俺は両手の小手をむりやり取り、頭の手ぬぐいも外した。

汗で濡れた金髪が、白い額にはらりとかかる。

「先生、俺が出ます」
「小池」
「先輩たち、相良先輩をお願いします」
「小池っ。俺が行くって言ってんだろっ」

駄々をこねる子供のように喚く相良先輩。

わかるよ。せっかく剣道を再開して、やっと自分と同等の強さの敵に出会えたんだ。