主審は赤、相良先輩。副審は白、田邊さん。もうひとりの副審は下で旗を交差させて振る。どちらともいえないということだ。

ふたりが再びにらみ合ったとき、ピリリリリと制限時間を知らせるベルが鳴った。

「やめ!」

ああ、と先輩たちが頭を押さえて一様にうめく。

引き分け──。

消耗した様子の相良先輩は、礼をすると右足を引きずって戻ってきた。

「クソッ」

竹刀を俺に押し付け、その場に倒れこむように座る相良先輩。

「相良先輩、面を取りますよ」

荒い呼吸をし、相良先輩は右足を抱えている。

限界なのだ。これまで何試合もできたのが、奇跡だった。

背後から面紐に手をかけると、小手をつけたままの手で払われた。

「代表戦があんだろ」

五名で決着がつかなかったら、チームの代表者同士の決戦が行われる。

「出るつもりですか」
「相良くん、ムリしないほうがいい」

青谷部長も説得するけど、相良先輩はかぶりをふる。

「だって、痛いんでしょう」

ひざまずいて覗き込むと、相良先輩は面の中で歯を食いしばっていた。

しかし、俺の視線に気づくと目を合わせてにやりと笑う。