オリエンテーションの類が落ち着いた四月下旬。やっと部活見学の日がやってきた。
正直うちの学校はスポーツに特化しているわけではなく、剣道部も強いわけではない。っていうか、無名に近い。
県大会に行った生徒は剣道で推薦も受けられるのだけど、俺は普通受験を選んだ。
剣道はほかのスポーツのように、プロになる道がない。よって剣道で食っていくことはできない。
だから剣道はあくまで趣味で、進学や就職とは別、というのが俺と親の共通した考えだった。
剣道は好きだし、部活は真剣にやるつもりだ……ったけど、正直もうくじけそう。
見学用に設けられた時間に武道場に赴くと、中には三人の部員がいた。
彼らは素振りをしていたが、俺に気づいた顧問らしき教師に「やめ!」と声をかけられる。
「ああーっ」
「もしかして、見学者?」
「一年生だね。どうぞどうぞ!」
面を外した彼らは、笑顔で俺を迎え入れる。