相良先輩が打つ胴を、腕を下げてすんでのところで防ぐ。

一進一退の攻防。なかなかどちらも一本取れない。

そんな状況が変わったのは、何度目かの鍔迫り合いのとき。

普通は鍔迫り合いになったらお互いに早く解消し、一度離れるというルールがある。

しかし田邊さんは相良先輩の鍔に自分の鍔を上から引っかけ、ぐんと押したのだ。

相良先輩が態勢を崩す。それを見逃さず、田邊さんが相良先輩に体を当てた。

「反則だ!」

顧問の声が響く。

ゴリラに体当たりされた相良先輩は、竹刀を持ったまま床に転がる。

「先輩!」

思わず声が出る。そのとき、審判の旗が上がった。

試合中断。

主審とふたりの副審が相良先輩に駆け寄る。

相良先輩は大きく息をして、立ち上がった。

足を庇っている様子はない。だけど、大丈夫かな……。

ふたりとも最初の位置に戻ると、主審が田邊さんに指導を言い渡した。