決勝戦になると、試合場が男子と女子それぞれひとつずつになる。

観客の視線が自分たちに注がれていると思うと、少し緊張する。

先輩たちは深呼吸をしながら、お互いを励ましあっていた。

「よくここまで来たな。最後は楽しんで、気楽に頑張ろう」

すでに県大会出場権を手にしているからか、顧問はニコニコと能天気な顔をしている。

気楽にできるわけがない。顧問は自分が戦わないからそう言えるのだ。

しかし弱気を口に出すと相良先輩に怒られるので、精一杯平気なふりをする。

「ではこれから、決勝戦を始めます」

試合場にアナウンスが流れた。

先鋒の俺は、整列前に面を装着する。

剣道では、バスケやサッカーのように、円陣を組んで気合を入れるというようなことはあまりしない。

俺たちは視線を交わしあい、出場順に並んで白線の外側に並ぶ。

相手と同じタイミングで中央に集まり、礼。

うわ、みんなゴリラみたい。

同じ高校生なのに、筋骨隆々の大人のような体形。

背も高く、立っているだけで威圧感満載。

さすが強豪校。相良先輩も、事故に遭わなければこの茶色の胴をつけていたのかもしれないな。