相良先輩は右足を袴の上からポンポンと叩いた。

だけど、本当はそんなことしたくないはずだ。

ずんと沈んでいると、いきなり頭を叩かれた。

「なにへこんでんだよ」
「だって……」
「ああ、そうか。綺麗綺麗って言ってた俺の汚いとこ見てショックだったんだな?」

斜め下から見上げられ、俺はキョトンとしてしまった。

だって、相良先輩の言葉があまりにも的外れだったから。

「いいえ? あなたは綺麗ですが?」
「は」
「汚いって、どこらへんがですか? あ、たしかにちょっとショックではありました。痛かっただろうなって。俺なんかが想像できないくらいの痛みだっただろうなって」

呆気にとられたような先輩の顔が、くしゃりと歪んだ。

しかしすぐにうつむいてしまい、その顔は前髪の中に隠れてしまう。

「……うん。すげー痛かった。傷もこんなに残って、死んだほうがましだって思ってた」

心なしか、彼の声が震えているような気がした。