「決勝戦は二十分後だ。今のうちに休憩!」
「はいっ」

なんとか気持ちを立て直したらしい先輩たちは、お互いに励ましあいながら、二階へ向かう。

俺と相良先輩は、その後ろをゆっくりついていく。

「相良先輩……」

周りが相良先輩のほうを見ている。

きっと誰にも見せたくなかったであろう傷をさらさせるなんて。

俺たちは、なんて弱いんだろう。

「ごめんなさい」

ここまで連れてきてもらったのに、弱音ばっかりで。

俺たちは相良先輩がいなければ、全然ダメだ。

「なにが」

階段を上がりながら、なにも気にしていないような顔で、相良先輩がこちらを見る。

真っ直ぐに見つめられ、俺は自分の弱さを恥じた。

「俺がもっとみんなを盛りあげなきゃなのに」

チームに勢いをつけるのが先鋒の役目。

それに、相良先輩がいなくても大丈夫なように、今からしていかなきゃならない。

「お前はそれでいいんだよ。俺がムチで、お前が飴なんだから」
「はい……」
「こんなもんいくら見せたって減りゃしねえよ」