そして、みんなのいいところを伸ばしてくれた。

「だから、俺がムリしなくても勝てるようにがんばれよ」
「はいっ」

相良先輩はこの大会だけしか、出場しない。

彼を頼り切るのではなく、自分たちの力を信じて戦うんだ。

「大丈夫、きみたちならできる」

すっかり影が薄くなった顧問の言葉にもうなずく。

まずは第一試合。

相手校の視線は相良先輩にくぎ付けだ。

それはそう、白道着に金胴なんて強いに決まってる。

「あれ、相良って……」
「復活したのか」

あちこちから、相良先輩を知っている人の声が聞こえる。

中学の時に轟いた名は、今でも人々の記憶に刻まれているらしい。

当の本人は、驚く人々の視線など気づいていないような飄々とした顔。

五人並び、試合場の中央で相手校と礼を交わす。

顔を上げると、向かいの壁際に田邊さんの姿を見つけた。

絶対に負けないからな。

そうして試合が開始。

第一試合、去年まで同じような力と思われていた学校に、俺たちは全勝した。

どこの部活でもそうだが、剣道は特に学年ごとに競技人口のばらつきがあり、強い先輩たちが卒業したら一気に弱体化……という学校も少なくない。

結局毎年シードにいるのは私立のスポーツ強豪校となる。強い選手を集めているんだから当然だ。