制服の時より、全身がたくましく見える。

ひょろっとした俺がチンパンジーなら、田邊さんはゴリラ。

ちょっと待て。どうして相良先輩と田邊さんが一緒にいるんだ?

「あっ、きみ。相良くん、復帰したんじゃないですか。どうして教えてくれなかったんです」
「へ?」

めちゃくちゃ凶暴な目でにらまれ責められて、意味がわからず言葉に詰まる。

相良先輩は完全復帰したわけじゃないし、そもそも田邊さんの連絡先知らないし、うちの部活の動向を教える義理もない。

ははあ、相良先輩が復帰したら自分の学校が勝てなくなるから焦ってるんだな。

「なんでお前に教えなきゃなんねえんだよ。八つ当たりすんな! 行くぞ、小池」
「え、あっ」

俺の言いたいことをほぼ言ってくれた相良先輩。

彼は俺の腕に自らの腕を絡ませ、強引に進もうとする。

わあ、体が密着する。

うれしいけれど、刺激が強すぎる。

もつれそうな足でついていこうとすると、後ろから声がした。

「僕は本気だぞ!」

田邊さんの声だ。

怒気を孕んでいるような、切実なお願いのような、大きな声。

心臓を逆なでされたように、ぞわりと嫌な感覚が胸の中で起きる。