反射的に振り返った俺は自分の目を疑う。

俺にぶつかったことなどなんでもないように振る舞う、おそらく上級生であろう五人の集団。

その中心に、彼がいた。

「相良……さん……?」

思わず名を呼ぶと、彼が振り返る。

間違いない。

彫刻のような美しい二重瞼、長いまつげ、高い鼻、滑らかな肌。

相良さんだ。

心臓が跳ね上がる。

同じ顔だ。間違いない。

しかし、彼には決定的に変わったところがあった。

つややかな黒髪は金色に染められ、耳にはピアスがついていた。

制服をだらしなく着崩し、俺を見る彼の目には、以前のような輝きがない。

他の四人も、顔の美しさをのぞけば彼と同じような系統である。

簡単に言うとヤンキーっぽい。ヤンキーって死語なんだっけ?

「知り合い?」

仲間が相良さんに聞く。

彼は眠そうな目で俺を一瞥し、首を横に振った。

「さあ」

やっぱり覚えてないようだ。