防具類はつけずに、キャリーケース型のバッグに入れてきている。

「道が混んでいて遅れた。すまん」

相良先輩は荷物を置き、ペットボトルの水を飲む。

どうやら家の人に車で送ってきてもらったらしい。

お父さん、どうやら剣道ガチ勢のようだしな。もしかしたら観客席から応援するのかも。

とりあえず、相良先輩が来てくれてよかった。

みんなが安堵の表情を浮かべる。

「おはようございます」

顧問が現れ、みんなで挨拶する。

「開場したら着替えて一階に集合。靴と荷物はかためて置いておくこと」

「はい」

顧問は顧問で審判やらいろいろと仕事があるので、ずっとつきっきりで引率するわけにはいかない。

注意事項などを話し、顧問は去っていく。

そのうちに武道場の職員が入り口のカギを開けた。

俺たちは二階の選手控室に入り、着替える。

出場選手が一気に集まるので、個別のロッカーなんてものも更衣室もない。

広い部屋のあちこちで、選手は着替えることとなる。

中学のときは外で着替えさせられたこともあるし、何度も経験していると慣れてくる。恥ずかしがっているほうが恥ずかしいのだ。