部活に参加するようになってから、相良先輩は真面目に学校に来ている。

あまり素行が悪いと、試合に出られなくなることもあるからだ。

部活以外では、いつものだらしない仲間と一緒にいるけど、最初に会ったような虚無顔はあまりしておらず、笑っていることが増えたように思う。

仲間たちも相良先輩のことを応援してくれているらしい。

そうしてあっという間に時は過ぎ、地区予選の日がやってきた。

「相良くん、来るよね?」

集合場所の市民武道場の入り口前で、青谷先輩が不安そうに言う。

午前八時集合の約束で、現在八時五分。

たしかにちょっと前まで、相良先輩は午後から登校するのが普通だったものなあ。

もしや寝坊したのではないか、突然面倒くさくなってボイコットされるのではないか。

二年生の先輩たちも不安を口にする。

「大丈夫です。相良先輩は来ます」

ハッキリ言い切ると、先輩たちはホッとしたようにうなずく。

来るに決まっている。

あの人が俺たちを裏切るはずがない。

「あっ、来た」

武道場の駐車場のほうから、彼は現れた。

白い道着袴の絶対君主。

いつもと違うのは、道着に学校名の刺繍がしてあること。

それがないと、試合に出られないからだ。