「こいつは他人にひどいことなんて言わねーよ。まっとうなこと言われて腹が立っただけだろ?」
「えっ」
「くせーくせーってさ、相手が傷つく言葉をちゃんと選んでるよね。ひどいのはどっち?」

笑顔で女子たちを追い詰める相良先輩。

こわっ。目の奥、全然笑ってない。

彼女たちは青ざめた顔を見合わせる。

「俺のかわいい後輩をいじめないでくれる?」

壮絶なほどの冷たい微笑の美しさに恐れをなしたのか、彼女たちは走って逃げていった。

「おおお~」

傷つくことを恐れず、見事にギャルを追い払った相良先輩にみんなが拍手を送る。

さすが、絶対君主。

「ありがとうございます、先輩」

お礼を言うと、相良先輩はふんと鼻を鳴らした。

「なめられてんじゃねえよ。お前は優しすぎんだ」

肩に置いた手を離し、背中をバンと叩く相良先輩。

「練習再開すっぞー」
「はいっ」

優しすぎかあ。そんなことないと思うんだけどな。

俺たちは気を取り直し、相良先輩の号令通りに動いた。