「あの、相良先輩もそう言ってますので……」

突っ立っている彼女たちに帰るように促すと、キッとにらまれた。

「おめえが指図すんじゃねーよ! このクソダサキモ剣道部!」
「くせーんだよ!」

ぶつけどころのない鬱憤を、俺に向けて容赦なく叩きつける彼女たち。

別になんて言われてもいいんだけど、練習ができないのは困るなあ。

ため息をつくと、肩をぽんと叩かれた。

「こいつが、なんだって?」

相良先輩の顔には薄い微笑みが貼りついている。

自然なものじゃない。まるでピエロのような、作られた笑顔。

「やだ、相良くんににおいがうつっちゃう」
「相良くんの言うことはきくよう。でもその前にそいつがうちらにひどいこと言ってきたからあ」

まるで反省していないどころか、俺を悪者に仕立て上げようとする女子たち。

あーもう面倒くさい。

入口を締めてしまおうと踏み出す俺を、相良先輩が肩に置いた手で制した。

「うつんねえよ。そもそも同じにおいしてっから」
「相良くんはそんなことないよお」

俺を庇う相良先輩。

女子のぶりっ子に鳥肌が立った。