「俺、言ってきます」

みんなの集中が途切れる。相良先輩が見世物になるのも嫌だ。

俺は勇気を出し、武道場の入り口を塞いでいる女子グループに近づいた。

「あのう、大きな声を出すのはやめていただけないでしょうか」
「は? お前どけし。相良っち見えねえし」

なに、この子たち怖い。

いろいろ塗りたくった目でにらまれ、とても嫌な気分になる。

どうして同じ高校生なのに、自分たちはエライみたいな態度になるんだろう。そんなのが許されるのは、相良先輩だけだ。

「えっと、剣道部も柔道部も大会が近いので、集中したいんです。どうかお帰りください」
「えー、そんなんうちら関係ないし」
「そもそもあんたたちモブなんて見てねえし」
「相良っち応援してるんだからいいじゃん」
「お前めっちゃくせーし。あっち行け」

最後の一言で、他の女子たちが鼻をつまんで爆笑した。

さっきの、応援なのか? ってか、俺がそんな言われ方しなきゃならない理由、ある?

でも一個言い返したら百個くらいの罵声が返ってきそうで、反論をためらう。

振り返るけど、先輩たちはみんな目を逸らして加勢してくれそうにない。