ちまたでは部活は縮小傾向にあり、外部のコーチを呼んでいる学校が増えている。

そんななか、無償なのに教師が顧問を真面目にやってくれているだけありがたい。

「そんなん普通だろ」
「それすらやってくれない人もいる」
「変なやつらだなあ」

相良先輩は眉を下げて笑った。


そんなわけで、剣道部は新たな一歩を踏み出した。

相良先輩はみんなに的確なアドバイスをし、すぐに部活にとってなくてはならない存在になった。

「頭下げてツッコむな! 面打ってくださいって言ってるようなもんだろ!」
「逃げるな! もっと打っていけ! 取らなきゃ勝てねえぞ!」
「いっつも右に体が傾いてる! お前はバナナか!」
「手首を返すタイミングがおそーい!」

練習をする俺たちに、大声で指導してくれる。

いつも見守っているだけの顧問は感動して、相良先輩の言葉を必死にメモしている。

先輩たちは激しさを増した練習になんとかついていっているという感じだ。

俺は相良先輩の次に強いらしいけど、それでも毎日なにかしら指導されている。

「ヘタクソ!」

ぽかーんといい音がして、俺は面を一本取られた。

相良先輩に打たれたのだ。