「ムリせず、できる範囲での参加で大丈夫。体が一番だから」
「お、おう……」
「むしろ指導してくれるとありがたい。よろしく頼む」
「そうそう。顧問、素人だからさ」

剣道経験がない顧問は、素人と言われて怒るでもなく「心強いなあ」とむしろうれしそう。

二年生の先輩たちも相良先輩をあっさり受け入れる。

怪我のことを事前に俺から話しておいたからだと思う。

ただの不良と思われていた相良先輩がそんな事情を抱えていると知ったら、三人の先輩たちは絶句していた。

同情といえば聞こえは悪いけど、みんな相良先輩のつらさを想像して受け入れてくれたんだ。ありがたい。

「……なんこれ。平和すぎんか、ここ」

相良先輩が俺に小さな声で囁く。

人間に騙されまいとしている小動物みたいで、キュンとした。

「いいでしょう。強豪校にはない人の温かみですよね」

強豪校、行ったことないから知らんけど。

なんとなくだけど、指導者も先輩も本気すぎて日常的にパワハラとかしそうなイメージ。あくまでも、イメージ。

「のんきすぎるだろ。てか顧問、未経験なのかよ」
「でも頑張って勉強してくれてるし、連絡も早いし、練習中にスマホ見たりもしませんよ」