六月。

すでにサウナ状態の武道場に、天使が舞い降りた。

「っちゅうわけで、怪我で休んでたんだけど、一瞬復活しまーす。よろー」

いや天使じゃなかった。白い道着を着た相良先輩だった。

柔道部もチラチラこちらを見ている。同じ白でも柔道部と相良先輩は全然輝きが違う。

「そういうわけだ。頼むぞみんな」

顧問は俺たち四人の部員を見回す。

部活の成績が上がったほうが顧問の評価も上がるので、季節外れの入部届は、あっさり受理された。相良先輩が怪我をしていたことを聞き、顧問はビックリしていた。

俺はもちろん相良先輩の加入を喜んで微笑みが抑えきれないが、他の三人はぽかんとしている。

「あ、ちなみにフルで稽古できるわけじゃないんで。グランドも走んないし、筋トレもムリ。地稽古くらいは付き合えるかな」

一番後から入ったのに、この俺様発言。

俺は拍手して「大丈夫です!」と答えられるが、先輩たちはどうだろうか。

おそるおそる彼らを見ると、三人とも実に神妙な顔をしていた。

「あの、相良先輩は怪我の影響で」

やる気がないわけではないことを説明しようとすると、青谷部長が手で俺を制した。

「来てくれてありがとう、相良くん」

真顔でお礼を言う青谷部長。

これには相良先輩も予想外だったのか、宝石のような目を見開く。