「最初は車いすで、徐々に松葉杖で歩けるようになって、今はこのとおり」

高校の入学式では、もう杖なしで歩けるようになっていたという。

しかし主治医に剣道はまだ早いと止められ、部活動は断念。

希望を失い、無気力な生活を送ることとなる。

「軽い運動ならできるけど、長時間とか激しいのはムリ。ちょっと頑張るとすぐ痛くなる」

彼は悔しそうに左足をさする。

「地道にリハビリ通えって言われたんだけど、心折れてさ。やってもよくなるかわかんねえらしいし」

事故から半年以上、リハビリを頑張った相良先輩。それでも足は元通りにはならなかった。

よくなるかわからないのにリハビリを続けるのは出口のない迷路でもがき続けるようなものだ。心が折れるのもわかる。

そんな事情を知らず、煽るようなことを言って、勝負を挑んでしまった。

怪我をした相手から一本取っていい気になっていた。俺は最低だ。

「すみませんでした」

深く頭を下げると、ペットボトルで叩かれた。

まだ中身がたくさん入っているので痛い。